IoTとは何か
技術革新から社会革新へ (角川新書)
坂村健 著
感想
流石IoTの第一人者、というような内容です。冒頭に「主観も入っている」との断り書きもありましたが、反論や突っ込みどころに関しては、少なくともIoT技術の専門家ではない私はありませんでした。技術が進化し、その新しい技術を中心として世の中が変わっていく姿が具体的に描けており、ワクワクさせる内容だと思いました。
技術に始まり技術に終わるこれまでのICT戦略と同じ轍を踏むことがないIoTの戦略が必要であること、その実現には「哲学」が必要であること、横たわる社会のガバナンスの問題など、オープンなIoT技術により実現できる未来と課題を適確に指摘しています。
一方で、ITに関する専門のカタカナ用語の多く使われており、初心者には少し難しいかもしれないと思いました。※私も3割くらいはわかりませんでした(笑)
私のIoTに対する考え方
私は当然、著者ほどの専門家ではありませんので、特に技術的な内容についてはあまり深くわかりません。
IoTとは何か
と聞かれれば、この著者の方のような目指すべきオープンなIoTの姿が正解なのでしょう。
私はどう考えるか。IoTはやはり技術的な手段と考えるべきなのかなと思います。私の活動領域においてIoTの導入を進めていくアプローチとしては2つの種類があるのかなと考えています。
- IoT技術を使うとどのような現場になるのか、そうなることで解決される現状の問題は何か、そのための課題は何か
- 起きている問題を解決するために何がしたいのか、その解決手段としてIoT技術を適用したらどうなるのか
この本では、前者のアプローチです。一方で、私は後者のアプローチを勧めています。国家レベルの社会問題や一部の超大企業においては前者のアプローチが良いのかもしれません。ところが、こちらは莫大な費用がかかることが容易に予測できます。もちろんそれ相応以上の効果も期待できるわけですが。さらに、相当の時間をかけた大きなプロジェクトになります。効果試算やあらゆる影響を十分に把握した上で進めなければなりません。
ところが、実際の産業の現場はそんな大きな改革を他力本願で期待し待ち続ける体力はありません。IoT技術で実現できる未来の姿は把握しておくにしても、現場でまずできることは始めてみて、小さな効果だったとしてもその積み重ねが重要になってきます。
技術の進化が実現する未来、大きな夢は共有して前向きに生きていきたいです。一方、現場を置き去りにしない新しい技術の活用も考えたい。
そんなことを考えさせられる1冊でした。
コメント