「人材不足」
現代の製造業において、大きく立ちはだかる問題です。
ホントに人はどこに行っちゃったんでしょう?
という重たい話はいったん置いておくとして(笑)、私が多く関わる、特に中小ものづくりの企業においてはその現実がまざまざと突きつけられています。
そんな背景も関係あるのかないのか、
・現場でバリバリ加工している課長
・設計図面もバリバリ書いてる部長
・新規導入した三次元測定機を立ち上げている課長
etc…
現場の日常作業をこなす管理職の方々もたくさんいらっしゃいます。
それ自体は問題ないとは思うのですが、それによって本来管理職としてやらなければいけない、
・Management(やりくり)
・Control(管理)
・Administration(事務統制)
の機能を果たせていない残念な管理職になっている現場もしばしば見かけます。
そういった “プレイングマネージャー” にお話を聞くと、
「忙しい」
「残業つかないのに定時には帰れない」
「もうしょうがない」
「今までの管理職の人もそうだった」
なんていうことを口々に言うのです。
今回は、そんな “プレイングマネージャー” を抜けられない理由について紹介していきます。
プレイングマネージャーを抜けられない5つの理由
それでは、一つずつ見ていきましょう。
その①:現場を離れるのがさみしい
多くの中小製造業では、担当者の中から管理職に昇進することが通例となっています。
例えば、旋盤や切削などの機械加工が得意だった担当者が、年齢を経て機械加工課の課長に昇進する、ですとか、製品図面や部品図を書く設計が得意だった担当者が設計課の課長に昇進する、なんてことが通例なんです。
つまり、そういった現場の管理職の人は、もともと現場で直接的に商品(価値)を生み出していた工程を担当していたにも関わらず、管理職となったとたんに、価値を生み出す工程からは引きはがされてしまうので、なんとなく現場から離れる “寂しさ” を感じてしまうのです。
「自分も他の担当とあーでもないこーでもない言いながら作業したいなぁ」
「工作機の音や成形機の音のない環境って寂しいなぁ」
なんてセンチな気分になっていませんか?(笑)
その②:自分のこだわりを捨てられない
これ、結構タチが悪いんです。
管理職になると、担当者の管理をしなければならない関係上、各担当者の “やり方” を観察する機会が増えます。そうすると、もともと担当者として優秀で管理職に昇進していますから、各担当者のやり方に対して、
「違う!」
「こうしたほうが早い!」
「こっちの方がやりやすい!」
などの感情を抱いてしまうのです。
効率化を求めることも仕事の一つですから、より良い方法を教えたい、より早い方法でやってもらいたい、と思うことは仕方ないです。
でも、ここで「ちょっと待った!」をかけてください。
一番最悪なのが、【自分でやってしまう】ということです。
・自分でやったほうが早い
・自分でやったほうが確実
なんていう理由で、自らがやってしまうことは断じてやめてほしいです。
なぜなら、管理職の人自身が作業をしてしまっては、担当者が成長しませんし、問題の根本解決にはなっていません。
目的は、その仕事を早く確実に終わらせることだけではありません。今後も継続的に早く確実に、より早くより確実にしていく現場を作ることこそが、管理職のミッションです。
そのことを忘れずに、自分の “やり方” に対するこだわりはいったん横に置いておいてほしいものです。
その③:信頼していない
言われて「ドキッ」とする人もいるのではないでしょうか。
担当者に任せたはずの仕事、なんとなく信頼してなくて、ついつい口出ししてしまう。
最悪の場合、
「オレやるからいいよ」
なんて言って仕事を与えない。
無意識な人もいるとは思いますが、心の底では担当者を信頼していない、ということは往々にしてあると思います。
これは負の連鎖を生むんです。信頼されていない、と思った側の行動はどうなるでしょう?
・自分が言ってもムダかな(提案しない)
・これ言う必要ないでしょ(報告しない)
・あの人に言ってもなぁ(相談しない)
結果、心がどんどん離れていく。。。
管理職とあらば、まずは自分から信頼する、少しの失敗は受け入れる、そのくらいの覚悟で担当者とは接しましょう。
その④:仕事の範囲や権限があいまい
これ、マネージャーに限った問題ではないのですが、課と課、部署と部署、課長と係長、係長と担当者、それぞれの “間” のグレーゾーンに関する線引きがあいまいになっている組織は良く見受けられます。
特に課長になりたてホヤホヤな人は、
「課長の仕事って何をどこまで?」
「あれは課長の仕事?」
なんていう戸惑いがあるものです。
課長なら部長と、部長なら役員と、自分に与えられている責務に関してじっくりすり合わせる時間を作ってください。
その際、忘れてはいけないことがあります。
「権限」の部分です。
マネージャーに与えられたミッションを達成するためには、どんな権限が必要なのかを想定し、自分にはそのためにどんな権限を与えられているのかを理解しておくことが重要になります。
これは、日本では特になかなかやられないことなんですが、欧米先進国では比較的当たり前にやっていることなんです。本来、責任と同時に、その責任に見合った権限を与えなくてはいけません。
「それ、自分がやっていいのかなぁ」
なんていう疑問が湧いてきたら、自分に与えられているミッションとともに「権限」についても上司や役員の方とお話ししてみると良いでしょう!
その⑤:自分の仕事の整理ができていない
「そんなはずない!」
なんて思う方もいるかもしれませんが、意外と当てはまるのがこれなんです。
例えば、課長にこんなことを聞いてみます。
「あなたの仕事は何ですか?」
そうすると、忙しすぎるプレイングマネージャーはこう答えます。
「作業日報の承認作業と、ちょっと現場が忙しくてその手伝いと、あとは課長会に出たり、生産計画組むのが誰もできないんで立てたり、ですかね。あっそうそう、外注先の訪問もありました!」
って、ちょっと待った!
これ、整理できてるって言いますか?
冒頭にも触れましたが、管理職の仕事は
・Management(やりくり)
・Control(管理)
・Administration(事務統制)
の3つです。
これに沿って、仕事を分類してみましょう。ちなみに、これに分類できない仕事は、本来は管理職がやるべき仕事ではないと考えてください。
きちんと整理することで、実は担当者にお願いできる作業も明確に切り分けることができるでしょう。
それに、本当に現場が忙しいのであれば、各担当者に理解を求めることや、自分がいなくてもどうにかなる現場を作る、そういった仕事にシフトしていくことができるはずです。
忙しさを外部環境やたまたまの状況のせいにしないで、まずは自らの仕事を整理してみる。ここから始めても良いと思いますよ!
おわりに
「イケてる組織」というのは、得てして管理職がヒマな組織であることが多くあります。
管理職の本来やるべき3つのことで言えば、
・Management(やりくり)
→担当者間で勝手にやってくれている・Control(管理)
→知っていればOK・Administration(事務統制)
→事務作業のみでOK
のような状態になるので、あまりやることがないのです。
これはあくまで理想ですので、人材不足の問題やトラブル対応などで簡単には実現できないと思いますが、理想を掲げなければ現状を打破することはできません。
忙しすぎるプレイングマネージャーの方は、そんな現状をただ受け入れるのではなく、理想を掲げて現状を打破し、自身の働き方改革をまずは実現してみてはいかがですか?
目的は、たくさんの作業をこなすことではありません。
価値を生み出し提供することです。
そのために管理職が果たすべき役割、もう一度俯瞰して考えてみるきっかけになれば幸いです!
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